豊島での「出会い」や「記憶」を形に。
『針貼工場 』コラージュワークショップのレポート
豊島の針工場では、2021年8月~11月までの開館時間に、お子様から大人まで楽しめるコラージュワークショップ、「
豊島の家浦地区にある針工場は、昭和の終わりに閉じられたメリヤス針の製造工場跡地に、宇和島の造船所にて一度も本来の役目を果たすことなく約30年間放置されていた鯛網漁船の造船用の木型を合体させた、大竹伸朗のコラージュ作品です。別々の記憶を背負った2つの存在が、作家によって重ね合わせられ、新たな磁場となって作品空間を形成しています。
「針貼工場」のワークショップは、この針工場を会場に行われる体験型のワークショップです。まずは作品の鑑賞から始まります。
「貼る(コラージュ)」という方法は、大竹さんの表現のベースの一つですが、針工場の入口にも、豊島の鉄工所や宇和島の造船所をはじめ、作家がさまざまな場所で出会った鉄、ゴム、木、タイルなどの素材が貼られていますので、参加者はまずこれをじっくり鑑賞します。
鑑賞後は、豊島での「思い出」や「記憶」をキーワードに、針工場の写真やパンフレット、チラシ等を用いて、作家と同じ手法「コラージュ」を体験します。
お子様から大人まで、幅広い参加者によって、さまざまなコラージュ作品が生まれましたので、いくつかご紹介いたします。
こちらは、最年少の参加者の作品で、島に住む2才のお子様がお母さんと一緒に切り貼りして作成しました。カラフルな色づかいで立体感のあるコラージュ作品ができ上がりました。
また、こちらは針工場の「船型」から着想を得たのでしょうか、折り紙やマスキングテープを用いて、「立体作品」を制作したお子様もいました。アンケートでも、「夢中になる子供の様子が見えました」とお母様からのお声をいただきましたが、制作中は子どもたち一人ひとりの真剣な様子が伺えました。
さらに、大人も自分なりの「コラージュ」を楽しまれていました。こちらの作品『ピピロッティとわたし』では、豊島にあるピピロッティ・リストの作品の鑑賞体験を通して、コラージュ作品を生み出していたり、『パーラー針工場~2021夏ver~』では、針工場にある一際目立つ「ヤシの木」を題材に、それを中心に「針工場」を表現していました。
「豊島での楽しい時間を形にできました。また、あれこれ悩みながら手を動かす時間は楽しかったです」「この体験を通して旅が充実し、いい思い出となりました」等のお声もアンケートを通していただいております。
豊島の風景や作品の写真、その人それぞれの「出会い」や「記憶」をコラージュすることで、旅を振り返り、鑑賞や滞在を深める時間にもなったようです。
針工場では館内で写真撮影も可能です。大竹さんの作品や豊島の風景を背景に、「写真でコラージュ」することも楽しみ方の一つです。その場所での「出会い」や「記憶」を大切にしている大竹さんの制作過程とも通じます。みなさまも豊島での「出会い」や「記憶」を作品にし、持ち帰りませんか。
■針工場ワークショップ「
日程:針工場開館日(2021年9月~11月 土・日・祝日)
詳しくはこちらをご覧ください。
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