直島町民とアートが密接にふれあう「町民感謝祭 2021」レポート
ベネッセアートサイト直島では、2021年11月22日(月)に直島町民限定で「町民感謝祭 2021」を開催しました。日頃よりベネッセアートサイト直島の活動へのご理解・ご協力をいただいている直島町民の皆様に感謝を込めて、直島の各アート施設での作品鑑賞や参加型イベントなど、各施設ならではのプログラムをお楽しみいただくことで、アートを軸とした活気ある直島の一日を創出することを目的としています。
地域の方々に向けたツアーやガイドなどの取り組みは、2015年よりさまざまな形で実施してきました。町民感謝祭は、2020年はコロナの影響により中止となりましたが、今回はようやく実施することができました。当日はあいにくの雨でしたが、各プログラムにお越しいただいた町民の方々には普段とはちがうアートとのふれあい、アートを介した語らいを楽しんでいただけました。
ワークショップ「秋深み 川柳を詠もう 李禹煥」
李禹煥美術館では、町民が選んだ作品の1つをじっくりと鑑賞し、それぞれの人々が感じたことや気づいたことを「キーワード」として自由に出し合い、それを素とした川柳・俳句をつくるワークショップ「秋深み 川柳を詠もう 李禹煥」というプログラムが開催されました。
朝いちばんの回の参加者は6名、なかには40年以上の歴史を持つ俳誌『草』に籍を置く森井照穂さんもご参加くださいました。森井さんは直島に住んで40年、「李禹煥美術館にはこれまで何度も、それこそ10回以上は訪れています」とおっしゃるほど直島の各アート施設に親しみ、誇りに思ってくださっています。2021年11月の『草』には次のような句が掲載されています。
「麗しき 秋蝶来てをり 島アート」
今回選ばれたアート作品は『点より』。スタッフからの「みなさんは何に見えますか?」という質問に、森井さんは「輪廻転生」とう言葉を真っ先にこたえてくださいました。「輪廻転生!いいですね!」というスタッフの声に勇気づけられ、他の参加者の方も「太陽」「はじめと終わり」「だんだん消えていくから月蝕」と意見交換が進みます。
アート作品を中心に人々が意見を交わすことで、一人では見えなかった新しい視点が次々に生まれ、作品を見る心も柔らかくなっていくようです。「川柳・俳句」制作では森井さんは意欲的に2種披露してくださいました。
「輪廻転生 濃きもうすきも 皆仲間」
「満月や 満ち欠けのある 大宇宙」
「俳句は、自分の"見たまま""見えたまま"を描くことが重要なことなのですが、今回の鑑賞体験でもスタッフの方からは"自分の見たままをおっしゃってください"と言ってくださいました。目の前にあるものをいかに突き詰めるかという点で句作と似ていますね」と森井さん。アート鑑賞と俳句づくりとの意外な共通点を教えていただきました。
その森井さんの励ましを受け、
「李禹煥 内側に見る 月蝕か」
という句をつくってくださったのがゆきこさん。参加者のなかでただ一人「初めて李禹煥美術館を訪れた」という方です。直島で生まれ育ったゆきこさんは成人後大阪に移り、3年前直島に戻ってこられました。
「わたしはアート施設が好きで、大阪でも安藤忠雄さんの建築は『住吉の長屋』や『光の教会』、『兵庫県立こどもの館』まで行きましたが、この李禹煥美術館がいちばん忘れがたい場所になると思います」
その理由は「川柳づくりなんて難しいことやらされたんだもの。でも1つ作ると、また別のものが頭に浮かぶからおもしろいですね。もう一度ここ(李禹煥美術館)に来てみて、ひとりでゆっくり考えてみようかしら」
ゆきこさんにとって幼い頃過ごした直島とはすっかり変わってしまったそうですが、この「町民感謝祭」を通して、新しい直島にも忘れがたい思い出の場所ができたようです。
直島の町民とアートが密接にふれあえる特別な一日
ほかにも「瀬戸内『鍰造景』資料館 特別開館」や「直島銭湯『I♥湯』季節湯 無料開館」などの特別開館や、「ホテル見学ツアー」や「本村アートさんぽ」「ベネッセハウス スパ見学」「地中美術館鑑賞ツアー」「オリジナルキーホルダー作り」などの多くのイベントなど、計7施設14プログラムが実施された「町民感謝祭」。直島の町民とアートが密接にふれあえる特別な一日になりました。
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