アートで豊島がもっと賑やかになれば
豊島・家浦地区の古い民家を改修してつくられた豊島横尾館。その豊島横尾館のお隣の民家で、緋田清美さんは育ちました。
「ここ(豊島横尾館)はもともと、緋田家の本家だったんですけど、しばらく空き家になっていたので、美術館になると聞いた時は大賛成でした。外観は当時と変わっていませんし、部屋も昔のままなんです。庭は赤くなっていますけど(笑)、立派なままで、やっぱり本家やなという感じです」
中学卒業からは高松や大阪で生活し、10年ほど前から豊島に戻ってきた緋田さん。現在豊島横尾館のお隣の生家には弟さんのご家族が住んでいますが、緋田さんも豊島横尾館のすぐそばで暮らしています。
「遠くからせっかく来たのに、休館日やから美術館に入れん人もおるでしょ? 全然見られへんのはかわいそうやから、隣の家から横尾館の庭を覗かせてあげたことあったんですよ。人気スポットになったらあかんから、この頃はやってないですが(笑)。地図を見てる人がいたら『どこに行くんですか?』って声をかけたり、島に来た人とお話するのは楽しいですね」
2010年に瀬戸内国際芸術祭がはじまり、同年に豊島美術館も開館。2013年には本家の民家が豊島横尾館として生まれ変わるなど、故郷の豊島は少しずつ「食とアートの島」として変貌を遂げ、国内外から来島者が訪れる場所になっていきました。
「美術館ができたことで島全体が活性化されて良かったと思います。豊島は人口が減っているので、島に来るお客さんが増えたり、若い人が移住してきたりしないと、船便の維持も難しくなりますから。『人が多くなってあかん』という人も中にはいるけど、島の人も民泊を始めたり、お店をしたり、経済的にも助かっていますね」
緋田さんは、豊島にあるベネッセアートサイト直島のアート施設はもちろん、豊島横尾館で開かれた「横尾館 DE 落語」をはじめ、針工場への船型の搬出、豊島八百万ラボの内覧会など、島民の方々に向けたさまざまなイベントにも足を運んでくださっています。
「針工場ができる時は、お祭りみたいやったね。みんなで賑やかに、船型を港から運んだのをよく憶えています。最後はクレーンで釣り上げて、上手に建屋の中に入れはったから、すごい技術やなど驚きました。美術館でイベントがあったら、参加するようにしています。都会と比べたら、やっぱり医療と文化が島には乏しいですから」
豊島で生まれ育ち、都会暮らしの経験も長い緋田さんにとって、豊島の魅力はやはり豊かな自然にあると言います。また、島ならではの人とのつながりの強さも、豊島の大きな特色だと緋田さんは感じているそうです。
「子どもを地域全体で育てているという感覚が今でも豊島にはありますね。一学年の生徒の数も5人や2人ぐらいで、都会では考えられないぐらい行き届いた学校教育がありますし、地域でも子どもが良いことをしていたらみんなで褒め、悪いことをしていたらみんなで叱る。やっぱり子どもがね、そこらで賑やかにしてるのがええかなと思いますね。ちょっとうるさいぐらいがちょうどいい(笑)。豊島は高齢化率が高いもんで、アートがきっかけになって若い移住者の方が増えて、島がもっと賑やかになれば良いなと思っています」
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